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まさかこんなところで(笑)
続きです。

こういう書き方じゃなければ続かないだろうなと
思ってたのでトライ。

ちなみに最初話はここ

***



どうして自分はこんな場所で平身低頭ひれ伏しているのだろう。
冷たい床に頭を摺り寄せるようにしてひれ伏しながら
紫苑は逡巡していた。

横には自分と同じ佇まいの景時。


御座所に来る前から景時に紫苑は重々言われていた。
決して面を見せないように。
声を立てないように。
そうすれば自分が朔ではないとはばれない。

頼朝様や政子様は実際に朔をしっているわけではないけれど
御家人の中には朔の姿や声を見聞きしているものも
中にはいるかもしれない。
逆に、今紫苑の姿や声を印象付けてしまわないためにね。
だって、お傍に召されたりしたらこまっちゃうでしょ?

最後は軽口で誤魔化そうとする景時に
紫苑はただ分かりましたと微笑み返した。
それだけで安堵の表情を見せる景時が
普段どれほど頼朝や政子に気を遣っているのかが分かる。

だからこそ、紫苑は長い廊下を一緒に渡る間
ただひたすら俯いたまま景時の足元を見つめて歩んだ。


身につけるものはすべて景時の妹だというその朔のものが
用意されてきていた。
それはおどろくほどに紫苑にぴったりだった。
そして悲しいほどにそれは落ち着いて地味な悲しみの色。
このひとも誰かを亡くして喪に付している。

着物を着慣れずもたついている紫苑に手を貸してくれたのは
景時と朔の母だった。
その母も紫苑を見て驚いた。
「おやまあ。これは間違えても仕方が無いね。
 でも貴女の方がすこおしだけ、朔より雅やかね」
褒められたととっていいのだろうかと
首を傾げる紫苑に、景時の母は寂しげなそして愛おしげな表情になった。
娘はどこへ行ってしまったのかわからない。
ただ無事で生きていてくれればいい。
それだけを念じている母が、よく似た女性を前にして
尚のこと心を痛めているのが分かりすぎるほどに分かるから
紫苑はただ礼を言うといわれるままに着物を着せてもらった。




そして、まるで映画セットかと見まがうばかりの
頑強な武家屋敷へと景時の馬の背に共に揺られて
紫苑はやってきたのだった。



みしり。


近づいてくる音は床が軋む音。
それも数名。


「いいね」

景時の声が緊張している。
どうやら頼朝が入ってきたらしい。


衣擦れの音がして人が座る気配がする。
そして恐ろしい沈黙が続いた後おもむろに紫苑に声がかかった。



「してそこに控えておるのが龍神の神子だな、景時」

「は」

短く、そして余分なことは答えない。
きっとこれが源頼朝なのだ。
景時の体中から警戒心が感じられる。
そして少し紫苑ににじり寄るとまた少しかばうように前にいざった。

「これに控え居りますのが妹の朔。
 黒龍の神子にこざいます」

「黒龍とな」

訪ねる頼朝らしき男の声に
ころころと笑う女の声。
遠慮も何も無い言い方に、これが政子かと紫苑は思った。


「滅びしもの。哀れな者共の魂を慰め
 そして癒す力を持つ黒龍の神子ですわ。
 再生と浄化の力を持つ白龍の神子の対」

「ほう。龍神の神子であることには変わりは無いだろう」

「それはそうですけれど、白龍の神子あっての黒龍の神子ですわ」

わけの分からない会話が繰り広げられている。
けれど口をさしはさむわけにはいかない。
驚き顔色が変わっていないかと気になり
紫苑は尚のこと床に額を摺り寄せた。

「役には立たないか」

「そうとは申し上げておりませんわ。
 亡者の魂を癒し慰められるということは
 すなわち怨霊にいうことをきかせられるということ」

「ほう、ならやはり当初の予定通りだな、景時」

「まさか」

ようやく声を発した景時に紫苑は驚いた。
いつの間にか景時は自分をかばうように前に座っている。

「女を戦に連れて行って何ができましょう。
 足手まといになって挙句多勢の命を落とすことに
 なるやもしれません。それに・・・」

言い募ろうとする景時を政子がさえぎった。

「梶原殿。これはご命令です。
 貴方の意見を聞いているのではなくてよ」

「は」

「それに」
政子がこちらを見ているのが痛いほど感じられる。


「足手まといになるなら貴方がなんとかすればいいことでしょう」


凍るような声に紫苑は体中に鳥肌が立つのを感じた。
この人は何てことを言うのだろう。
自分は戦に、このままだと戦場へ連れて行かれるらしい。
そして何をさせれるのかわからないが
足手まといになるようなら殺してしまえとあっさりと言われている。

そういう世界なのか。
ここは。
時代劇でしか見聞きしたことの無い世界が目の前で繰り広げられる。


「出陣は明朝」

「御意」


紫苑が戸惑っている間に衣擦れと軋みが去っていった。
そしていくつかの軋む音や足音も。



しんとした空気を打ち破るように景時がぽつりと言う。


「ごめんね。やっぱりだめだった」

「どういうことか話してくれますか?」


これまでは「とりあえずついてきてくれ」、の一点張りだった景時が
ようやく意を決したように頷いた。


紫苑は頬をつねってみた。
ありきたりなことだがやはりやってみないと。
そして頬はとても痛かった。
くやしくて、景時の頬もつねってみた。
景時は黙ってつねられてくれた。

「痛いね」

「痛いね」

「夢じゃないんだね」

「ああ。ごめん」

「謝らないで」

「うん」

景時はそのまま黙り込んで紫苑を伴うと御座所を退出した。
馬の背に揺られながら
紫苑は景時が言うことを纏めているのだと感じていた。


そして馬から振り落とされないようにと
少しだけ景時に近づいて腰に抱きついた。




つづく・・・
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