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2008’12.08・Mon

少しずつの幸せ 7

少し開きましたが、続きです。
7話目。

つづきからどうぞ・・・










大石は五日我慢した。
けれどそれが限界だった。


手塚家に招かれる日の前日、大石は雪乃に連絡を取った。
声を聞いてほっとした。やっぱり気持ちは偽れない。
雪乃は自分にとって特別なのだ。
声を聞いただけで歓喜が湧き上がる。こんなことは今までなかった。

「明日、迎えに行くよ」
「手塚さんち、私も行っていいの?」
「英二と行く方がいいのなら」
言葉を雪乃が遮った。

「ううん。秀一郎と行く」

雪乃も寂しかったのだ。
もう二人に将来がないかもしれない。
諦めてもう会うのはやめよう。
そう思えば思うほど気持ちは落ち込み、英二にどったの?と聞かれる始末。
彼には誰か自分よりも相応しい人がいるだろうと思えば思うほど、
そのまだ見ぬ誰かに嫉妬した。
そして苦しんだ末に決めた。
こんな中途半端で諦めるくらいなら手酷く振られるまで諦めない、と。

大切な人なんていらない。
誰かを失うくらいなら。

そう思っていたのに、気持ちを確かめ合っていない今でさえこんなに苦しい。
それならば、と俯き加減だった雪乃は、強い瞳を上げた。
それは大石が魅せられた立ち向かう瞳だった。




約束よりも十分早く大石は雪乃を迎えにやってきた。
十分前のそのタイミングを英二から聞いていた雪乃は、
玄関に立った大石の姿を見て笑った。
思いがけず笑顔で迎えてもらえて、大石も戸惑いながら笑う。
此処に来るまではもうだめだろうか?
気持ちを告げる前に切り捨てられてしまうだろうか?
といつになく悲観的になってしまっていたというのに、
笑顔に迎えられてそんな憂鬱がふっと晴れていくのを感じた。



車で三十分ほど郊外に出る頃には辺りはここも東京?という風景が広がっていた。
そんな住宅地の一画に手塚国光の家はあった。
そういえば、と手塚の奥さんで先週新生児室で出会った女医のことが話題になった。
彼女も手塚国光本人に負けず劣らずのアスリートだったのだと聞いて、雪乃は驚いた。
宮村サキ。四回前のオリンピックでの女子マラソンの金メダリスト。
陸上は余り見ない雪乃でさえその名前は知っていた。
その彼女が手塚の伴侶であることが先ず驚きなのに、
何故医者に?と聞くと大石はさも面白げにそのいきさつをかいつまんで話した。


大きな大会に出るのはこれっきりと、
最初から宣言していたオリンピックで金メダルをとった後、
惜しげもなく引退した宮村サキは、
肘を痛めた幼なじみの手塚国光を陰で支えたいとスポーツドクターを目指した。
短く言うとそういうことだったのだが、どうも色々いきさつがあったようで、
大石も少なからずそれに関わったということだった。
大石の後輩として入学してきた宮村サキは、
マラソンに注いでいた情熱をそのまま医学の道に注ぎ、
きちんと六年で医者になったんだよ。
手塚のプロ在籍中に間に合ったと、それは嬉しそうだったのを今でも覚えている
と大石に聞いて、二人の情熱の激しさに雪乃は眩暈がする思いだった。


出迎えられた手塚家では、その話の片鱗をも感じさせないほどに
穏やかでほのぼのとした空気に溢れていた。
プロ現役の頃には鋭い眼光でライバルを震え上がらせ、
観客を魅了したあの視線は、わが子に向けられ細められていた。
先日会った女医も白衣を脱いで魅力を客達に存分に振りまいていた。

「お~い♪遅いぞ、大石!」
先に到着していた英二が二人を呼ぶ。
周りには青学時代の同級生や、サキの知り合いだろう人物達が会場となっている庭に溢れていた。




つづく・・・
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