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2008’12.11・Thu

少しずつの幸せ 9

9話目です。
つづきからどうぞ・・・







「あ、ちょっとあちらに食材出してくるから、こっちで残りの野菜切ってくれる?」

庭では今バーベキューの準備の真っ最中で、
切れただけとにかく材料を出してくるとサキが言う。
どうやらあちらは火を起こすのに大騒ぎになっている。
切ってくれといわれても料理は余り得意でない雪乃は、
とにかく野菜を洗って、大振りに切ればいいのか?と
ジャブジャブと水に野菜を漬け始めたときだった。


遠くで何か音がする。


耳を済ませてみると、それは泣き声のようだ。
何かが啼いている声。
ネコ?
ううん。
この家には確か生まれてまだ余り経っていない赤ん坊がいたはず。
そうだ、あれは赤ちゃんの声!


雪乃は慌てて赤ちゃんの声のする方へと急ぎ足で廊下を渡っていった。




そこは小さな部屋だった。
白木の木目のドアを開けると、清潔な白のシーツが際立つサークルの中で、
ふにゃふにゃと赤ん坊の声がする。
これがあのコウ君の妹なのかな?名前は確か・・・

「ヒカルちゃん?」
そっと名前を呼ぶと、ふにゃふにゃが一時休止。
声が止まり、雪乃の歩みもストップ。
しばらくそのまま固まったようにヒカルの顔を見ていると、
何もしてもらえないもどかしさにまたヒカルがぐずる。

「え、あ、あの」

かける言葉も見つからず、とりあえずサークルを覗き込んでみると、
まだようやく笑うことを覚えたおぼつかない笑顔が雪乃に向けられた。
あ、ちょっと可愛いかも。観客に受けたのが分かったのか、
ヒカルは小さな手をグーにして振り上げて応える。

そのままで大丈夫かな?と雪乃が後退りして戻ろうとすると、
その気配を察して逃すものかとヒカルがまた泣き声をあげる。
その繰り返しをするうちに雪乃は気づいた。


「構って欲しいの?」
うんとでも言うように、ヒカルがうにゃうにゃ言う。

「そっか」
うにゃ。

「もしかしてお腹すいた?」
うにゃにゃ。

「う~ん、でも持ち合わせないし」
自分の胸を見ながら雪乃はぽそりと言う。

うにゃん。

「遊んで欲しいの?」
うにゃ。

「そっか。でもトランプとかって訳にはいかないわね」
うにゃ~うにゃうにゃ。

「え?もしかしてオムツ?」
う、う、う。

「わ!それはどうしようもないわ。お父さん、呼んでくるわね」
うううう、うううう、うううう。

「わ!泣かないで~」







「あれ?雪乃は?」
キッチンの様子を覗きに来た大石がサキに尋ねる。
「え?そうなのよ。どこへ行ったのかしら?」
「そろそろヒカルのミルクの時間なんだが」
「あ、手塚」
「もしかして」
「え?もしかしてって?」




ちょっと様子を見てきてくれと手塚に言われて、
大石が探し当てた白木の木目の扉は少し開いていた。
思わず立ち止まって大石は我が眼を疑った。
雪乃が床に座り込んでいる。
胡坐をかくように座り込んだ膝の上には
自分が出産の時に立ち会った手塚家の長女ヒカルが遊んでいる。
そう、四ヶ月の赤ん坊を雪乃が遊ばせているのだ。
大した事をしているわけではない。
ただ膝の上で抱っこして、顔を見つめながらうにゃうにゃ、ぶうぶうお話をして、
笑ったり顔をしかめたりしている。
それを見てヒカルがやっぱりうにゃうにゃ、ぶうぶうお話をして、
サービスに拳を舐めてみたりしている。


美しい光景に大石はすぐに声を掛けることが出来なかった。
これが先日青ざめて赤ん坊を大石に返した雪乃と同じ女性なのだろうか?
しばらく見ていると、雪乃の頬に一筋の涙が流れた。

「ひろ、ごめん、ひろ」



つづく・・・
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